ことばのほとり

新規テミンペンのゆるいオタ日記

テミン『IDEA:理想』MV感想②|イデアをめぐる放浪

テミン『IDEA:理想』MV感想第2回。
第1回はこちら↓↓↓

lkotonoha.hatenablog.com

 

 

テミン『IDEA:理想』MV感想②|イデアをめぐる放浪

※第1回でも書きましたが全部仮定の話です。
※今回で完結。

そもそもテミンとは何か?

ここで言うテミンは生物的な人間男性イ・テミンではなく、アーティストのテミンのこと。

TAEMIN 태민 '이데아 (IDEA:理想)' MV
https://www.youtube.com/watch?v=KUvOQlkLNhE

実はMV冒頭にその答えが示唆されている。

刑務所の面会室を模したようなセットの中、2人のテミンが衝立を挟んで向かい合っている。
片方は人間男性イ・テミン、もう片方は大衆がイメージするテミンとすると、アーティスト テミンの正体はこの衝立に他ならない。

例えばDLのミッ🐭ー。夢を壊して申し訳ないが、実はあれは着ぐるみで中にはアクターがいてミッ🐭ーとして振る舞っているだけなのだ。しかし私達はあれをアクターが入った着ぐるみとは認識しない。僕らのクラブのリーダー ミッ🐭ーマ🐭スとして認識する。それは私達の中にミッ🐭ーのイメージというフィルムがあり、着ぐるみをスクリーンにしてそれを映し出しているからだ。

テミンも同じで、人間テミンがアーティストとして振る舞い、大衆が各々のテミンイメージをそこに投影することで初めて「アーティスト テミン」が成立する。

言ってしまえばこの構造の受容こそが『IDEA:理想』だ。

テミンの中にテミンがいる

ちょっと整理する。

まず前提として人間テミンがアーティストとして振る舞うためには彼自身の中に理想のテミン像が必要となる。以下の歌詞にもある。

理性が作った小さな投影 本能により育ち
深い所に咲いた夢よ 夜を抱いたまま深まる Shadow

https://www.youtube.com/watch?v=KUvOQlkLNhE

マイケル・ジャクソンに憧れてSMEの門戸を叩いた少年が「こんなアーティストになりたい」と思い描いた夢、理想のテミン像。だがこれは、歌詞の"投影” "深い所” "Shadow”が暗示しているように、洞窟の影に過ぎずない。

みんなの中にテミンがいる

一方で大衆…大衆を構成する個々の中にもそれぞれテミン像がいる。コンテンツを通して得た各種のイメージ、可愛い、女の子らしい、ダンスが上手い、●●に似ている…実はそれもあくまで洞窟の影に過ぎずないのだが、私達はそうやって好き勝手にテミンを定義する。

結局テミンとは何か?

そろそろ頻出するテミンという単語でゲシュタルト崩壊していませんか?多分テミンのアイデンティティ・クライシスもこんな具合で起きた。(テミン『IDEA:理想』MV感想①|イデアをめぐる迷走 - ことばのほとり 参照)そして、ある意味そのお陰で、テミンはようやく洞窟を抜け出せた。

ちなみに、もしプラトンイデア論にのっとるなら、洞窟を抜け出した先でテミンは「究極で完全なテミンのイデア」を見つけるはずである。しかし、テミン自身がインタビューで"暗闇から自分を解放し、新しい自我、アイデンティティ、意味を発見する啓発の旅に乗り出したいのです。”(引用:https://hypebae.com/2020/11/taemin-lee-never-gonna-dance-again-act-2-album-superm-member-korean-music-release-interview)と語っているとおり、おそらく、というか確実にテミンは「テミンのイデア」なんて存在しないと考えている。

テミンが洞窟を抜け出した先で見つけたのは「アーティスト テミン」が振る舞う者と観る者との関係性において束の間出現する幻想に過ぎないという事実、そのうえで「アーティスト テミン」のアイデンティティを求めさまようはてのない問答の旅路である。