SMアーティストのMVにはとにかく車が頻出する。
この秋なんてテミン→WayV→aespaと立て続けに公開されたMV全てに車が登場していた。
SMは隙あれば車を出したがるし、雑に扱いたがる。
疾走感や閉塞感というニュアンスを加味するのにちょうどいいモチーフなのかもしれない。
ただ、テミン『Guilty』のMVではもうちょい重要な役割が与えられてる気がする。
テミン『Guilty』MV感想|車
まず私は『Guilty』MVをテミンの半自伝的作品と解釈していて、この記事もその前提で書き進めていく。
半自伝的作品についてはコチラで書いたので今回は省くよ↓
車には乗車定員がある
最初に引っかかったのはこのシーン。
描かれているのはデビュー候補生からデビュー確定組を選考する過程。
ここに車が登場するのは、車には乗車定員があるからだ。
限られた定員数、それより多い候補生。要は車はデビューの象徴として登場する。
そうして見れば、テミンが一度逃亡をはかった際に近くに停車していたのも頷ける。
過酷な練習生生活とデビューを天秤にかけ、葛藤しながらも結局テミンはデビューをとる。
その瞬間に場面は切り替わり、彼は初めて「罪」を口にする。
You got me G-U-I-L-T-Y
そして口から数百の嘘を吐く。
その代償としてテミンは心に無数の鍵をかける。
燃えた車は走れない
こうしてテミンは「ただのテミン」から「アイドルのテミン」となった。
その先に待っていたのは何かに突き動かされるように狂乱する群衆と燃える車。
生命はしばしば火に例えられ、車が燃える様はそのままアイドル生命を意味している。
しかし燃えた車はそのうち走れなくなる。
車が燃え尽きることはアイド生命が終わることと同義だ。
競争激しい芸能界で15年という時間を過ごしてきたテミンは、デビューしたアイドルも、同時に業界から去ったアイドルも沢山目にしてきただろう。
群衆の熱狂とは対照的にテミンの目は静かで空虚だ。
車と名もなき群衆
車が燃えていくのも気にせず踊り狂う群衆、時に彼らは遊び半分で車のドアを開けたり、ルーフに乗ったりさえする。
燃える車がアイドル生命、引いてはアイドルそのものを表しているなら、その周りで熱狂する群衆はファンダムに他ならない。
群衆を構成する一人一人に名前はなく、ただ乱れ、荒ぶり、奇怪な行動に熱中する集団として俯瞰的に描かれている。
それはテミンの目線を通しているから、と言うのは若干の正直抵抗があるけど、でも意図としてはそうだと思う。
ただ、テミンはそう仕向けたのは自分自身であると歌うし、誰一人責めたりしていない。
車を乗り換える
MVのラスト、束の間の夢から覚めるように、テミンは焼け焦げたボンネットの上で目を開ける。車の窓には大きくバツ印が貼られ、この車体がこれ以上走行不可能であることを告げている。
なぜ車のボンネットが焦げているのか?実はテミンが倒した的から引火したことがMV上で示されている。自身が燃やした車、つまりテミンのアイドル生命だ。
と言っても、テミンは今もなお(ありがたいことに)アイドルを続けている。
これはテミンの第一幕(デビューから兵役前まで)が終わったということで、すぐ近くに別の車、彼の第二幕用の車が用意されている。
テミンは兵役義務で業界を離れていた時期について
「アーティストのテミンではなく、テミンという人を感じることができる機会でした」
引用:Taemin on ‘Guilty’: “I think it's more attractive to make the negative look beautiful”
と述べている。
画家が節目に自画像を描くように、この幕間が半自伝的作品を生み出すきっかけになったのかもしれない。
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